【再録:錦織圭の過去記事②/2014年9月】日本中が熱狂した、USオープン準決勝のジョコビッチ戦勝利。あの日の彼が見ていた高み——。
日本時間5月1日早朝、錦織圭が自らのソーシャルメディアで、今季限りの引退を表明しました。改めて、彼が歴史を塗り替える数々の場面に居合わせられた幸福を、噛み締めずにはいられません。錦織圭の過去記事振り返りの2回目は、やはりこの一戦。当時『スマッシュ』のFacebookに掲載した速報を、語尾などを少々整え再録いたします。
内田暁
2026.05.02
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快音を残し、錦織のフォアがダウン・ザ・ラインに叩き込まれた時、2万人の観客からどよめきが沸き上がった――。
実際にはそのショットは、懸命に走り手を伸ばしたジョコビッチに返され、ラリーは継続していく。真の歓喜の時が訪れたのは、それから3打後。ジョコビッチのフォアがボールを捉えたその瞬間、ボールがラインを越えるであろう予感に――つまりは勝者が決する確信に、スタジアム全体が息を飲む。線審の「アウト」の声は、それより早く沸き上がり空気を震わせる大歓声に、かき消された。
錦織はラケットを落とすと、ファミリーボックスに向かい両手の拳を何度も引き寄せ、祝福と称賛の声を全身で浴びる。スコアは6-4, 1-6, 7-6, 6-3。2時間52分のドラマが、大団円を迎えた瞬間であった。

錦織の勝利を報じる『ニューヨークタイムズ』