コーヒー畑から始まった、長い長い旅路――。43歳にして世界1位に至ったロハン・ボパンナが明かす、幼少期、平和への願い、そして次世代への思い

柚木武と組み、ジャパンオープンダブルス決勝進出のロハン・ボパンナのインタビュー記事です。『Yahoo!』でも同テーマの記事が公開されましたが、こちらはその倍のボリュームのノーカット版。ボパンナを長く取材してきたインド人記者の寄稿も盛り込んでいます。
内田暁 2025.09.30
サポートメンバー限定

「コーヒーショップの席に座っていると、今でも不思議に思うんです。どうやって私は、ここまで来られたのだろう……と」

 鳶色の目で遠くを見つめ、彼は柔らかく言葉を紡ぐ。

 それは“プルーストの香り”のように、コップから立ち上るアロマが、コーヒーに囲まれ育った幼少期の記憶や思い出を、呼び起こすからなのだろう。

 もっとも彼が、子どもの頃に知るコーヒーは、飲み物ではない。

 母国インド南部の、小さな村。褐色の果実を実らせる背よりも高い樹木が、延々と広がる緑の大地――。

 今年45歳を迎えたテニスプレーヤー、ロハン・ボパンナは、その地から、“史上最年長ダブルス世界1位”への道を歩みはじめた。

自ら申し出て実現した、柚木武とのダブルス結成

 現在、東京都で開催されているジャパン・オープンは、『ATP500』と呼ばれるツアーカテゴリー大会。日本の選手たちにとっては、大舞台を踏むまたとないチャンスでもある。

 その大会で、ボパンナは日本の柚木武と組んで出場中。準決勝で第1シードを破る快進撃を見せ、ついに決勝まで到達した。

 現在ダブルスランキング世界112位の柚木にとって、これがツアー大会初の決勝進出なのはおろか、白星を得たのも初。ボパンナとコートに立ち、その動きを、技を、呼吸を隣で感得しながら、試合中にも急速に成長中だ。

勝利後にオンコートインタビューに応じる柚木(中央)とボパンナ(右) 撮影:内田暁

勝利後にオンコートインタビューに応じる柚木(中央)とボパンナ(右) 撮影:内田暁

 このペアが実現したのも、ボパンナからの提案だったと、デビスカップ日本代表監督の添田豪が明かす。

「僕が世界に出始めたばかりの頃、ロハン(ボパンナ)はまだシングルスで戦っていた。アジア人選手が少ないなか、年齢が近かったこともあり、色々親切にしてくれた」と添田が回想する。

 そのような縁もあり、ボパンナは今回のジャパン・オープン出場を考えた時、添田に「誰か日本人で、僕が組める選手はいるかな?」と申し出たという。「こんなビッグチャンスはない!」と思った添田監督は、まだパートナーが決まっていなかったこともあり、196㎝のサウスポー、潜在能力の塊のような柚木を推した。

この記事はサポートメンバー限定です

続きは、4603文字あります。

下記からメールアドレスを入力し、サポートメンバー登録することで読むことができます

登録する

すでに登録された方はこちら

読者限定
メディアルームの片隅でしみじみと噛み締める、BNPパリバオープンの売り...
読者限定
「最も好きだが、最も御しがたい」大会だと選手たちが声を揃えるインディア...
読者限定
祝誕生日記念:気さくで知的な大富豪のお嬢様。ジェシカ・ペグラという色彩...
読者限定
世界の記者たちが選ぶ、「私的2025年ベストマッチ」②
読者限定
世界の記者たちが選ぶ、「私的2025年ベストマッチ」①
読者限定
連日の観客動員記録更新も、地元では賛否両論?100億円の赤字補填にまい...
読者限定
大坂に敗れたシルステアが、大阪で見せていた笑顔
読者限定
ギプスと悪夢とハッピースラム――。遅ればせながら全豪オープン情報発信、...